1対1
「ねえ、馨、キスしよっか」
そのタイミングはいつも突然。
今だって図書館で分厚い本の背表紙を追っている。
「うん。しよっか」
30センチ向こう。
本棚の向こうに別の生徒がいて、ページを捲る紙の音が聞こえる。
別に人に見せたいわけじゃないけど。
光曰く「ギリギリのスリルっていうの?そういうのって・・・興奮するよね」
僕のほうから唇に噛み付いた。
噛み付くという表現は正しい。
キスもセックスも僕等にとってはゲームと同じ。
溶け合う感覚を楽しむゲーム。
相手を何処までギリギリにするかを競うゲーム。
歯列をなぞる同じ形の舌。
その舌を捕まえてきつく吸う。
どちらのものかわからない唾液を飲み込む。
飲み込めずに頤を伝うのも興奮する。
いつかお互い別々の人と同じことをするんだろうか。
最近そんなことばかりを考える。
光に違う人が出来たなら僕は喜んで祝福をする。
光だってそうする。
続けようと思えばいつまででも続けられる。
切ろうと思えばいつでも切れる。
それが今の僕等。
兄弟の愛情と恋愛の愛情は違うものなんでしょ?
終わりがすぐそこに見えているような気がする。
畏怖。
打ち消す為にさらにキスを深くした。
光の髪に指を滑り込ませる。
下唇を舐め上げる。
すると制服のズボンに光の手を入れられた。
「・・・っあ」と唇を離す。「それ、反則じゃん」
「だってさあ」
「なに?」
「・・・なんか、今日の馨、えろい」
光の眼は潤んでいて色っぽかった。
僕の眼も同じ色をしているんだろうか。
こんな多くの本の中。
どこにも僕等の答えなんて書いてないんでしょ?
(060528)