喰らう。
「ねえ、光、人類の2大タブーって知ってる?」
夕食後、砂糖をめいっぱい入れたアールグレイを喉に通した。
壊れそうな甘さが心地良い。
ベッドルームのカーテンが揺れる。
「なにそれ」
「1つは人肉喰いなんだけど」
「ちょっとやめてよ。さっき食べたステーキ思い出しちゃうじゃん」
向かい合うテーブルの向こう。
光はあからさまに眉を寄せる。
「嫌なら吐けば?」
「そっちのがもっと嫌だよ」
「今日のおいしかったよね」
光はティーカップに角砂糖を更に3つ入れた。
「で、もう1つは何か知ってる?」
「何?」
「近親相姦だって」
「けどそれって遺伝的な問題でしょ。僕等やったって子供生まれないじゃん」
「社会性の問題だってサ」
「家族でいちゃついたら皆で仲良く出来ないでしょ的なこと?」
「多分ね」
僕は薄い紙包みを破って角砂糖をそのまま口に入れる。甘い。
「そんなことでタブーにされちゃ敵わないね」
答える代わりに口を吸った。
唇の間。歯と舌の間でキューブ状だった物は次第に形を失う。
獣のように音をたてて、きつく互いの舌を吸う。
口内の粘膜には血が通っている。
唇を離した瞬間の赤が目に焼きついた。
「吐き気がするほど甘いんだけど」
「口直しする?」
僕は服の釦を1つ外す。
(060610)